水の呼吸 参ノ型 流流舞い
竈門炭次郎
雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連!!
我妻善逸
初登場は11巻91話・作戦変更。上弦の陸・堕姫との戦いで、堕姫の首を落とさんと防御を捨てて走る伊之助を援護するために繰り出されました。無限列車編で現れた上弦の参・猗窩座との戦いで炎柱・煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)は善戦するも命を落としてしまいます。沢山の人を守り、夜明けまで戦いきった柱の姿に感化された善逸は、今まででは嫌がっていた一人での任務も怖がりながらも駄々をこねず行くようになり、厳しい鍛錬も炭治郎たちと共に逃げずに励むようになり、その鍛錬の甲斐もあり、霹靂一閃・六連は霹靂一閃・八連へと進化を遂げました。
はじめに:鬼滅の刃・遊郭編で輝いた炭治郎と善逸の共闘
物語「鬼滅の刃」の中でも、特に苛烈な戦いが繰り広げられたのが遊郭編です。夜の闇に紛れて人々を喰らう鬼が住む、煌びやかな遊郭※。この地で鬼殺隊士たちが対峙したのは、上弦※の陸に位する堕姫※と妓夫太郎(ぎゅうたろう)という兄妹の鬼でした。その強さは柱でさえも苦戦を強いられるほど絶大です。この絶望的な状況下で、一筋の光として描かれたのが、竈門炭治郎と我妻善逸が見せた奇跡的な連携攻撃でした。炭治郎の「水の呼吸 参ノ型 流流舞い※」が舞い、善逸の「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃※・八連」が閃く。この二つの技が重なった瞬間は、多くの読者に感動と興奮を与えました。この記事では、この名場面を深く掘り下げ、二人の技の秘密と、その裏にあった確かな成長の物語を紐解いていきます。
※遊郭(ゆうかく):江戸時代に公認された遊女屋が集まる区画のこと。
※上弦(じょうげん):鬼の頂点に立つ鬼舞辻無惨配下の、特に強力な十二体の鬼「十二鬼月」のうち、上位六体のこと。
※堕姫(だき):上弦の陸の鬼。美しい花魁の姿をしている。
※流流舞い(りゅうりゅうまい):水の呼吸の型の一つ。
※霹靂一閃(へきれきいっせん):雷の呼吸の型の一つ。
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」とは?その特徴と性質を解説
まず、炭治郎が繰り出した「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」について見ていきましょう。炭治郎が最初に習得した水の呼吸は、すべての呼吸の基本とされています。その最大の特徴は、変幻自在な対応力にあります。激流のように荒々しく攻め立てることも、凪いだ水面のように静かに攻撃を受け流すこともできる。どんな敵、どんな状況にも形を変えて適応できる、万能の呼吸です。その中でも「参ノ型 流流舞い」は、防御と回避、そして移動に特化した技と言えます。
流れるような動きで敵を翻弄する炭治郎の剣技
「流流舞い」は、まるで水が流れるかのような滑らかな足運びで、敵の攻撃範囲を舞うように移動します。ただ避けるだけではありません。移動しながら同時に斬撃を繰り出すことで、敵を翻弄※し、隙を生み出します。炭治郎の優しく真面目な性格は、この柔軟な水の呼吸と非常に相性が良いのです。特に遊郭編で対峙した堕姫は、自身の体から帯を自在に操り、広範囲かつ予測不能な攻撃を仕掛けてきました。その無数の帯の攻撃に対し、炭治郎は「流流舞い」を用いて、攻撃の嵐の中を縫うように駆け巡り、仲間が攻撃するための活路を開いたのです。
※翻弄(ほんろう):相手を思い通りにあしらい、もてあそぶこと。
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連」とは?善逸の成長の証
次に、善逸の「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連」です。雷の呼吸は、一点集中の神速を極めた呼吸法です。その速度はまさに雷鳴が轟き、稲妻が閃くがごとし。善逸は雷の呼吸の複数の型の中で、基本である「壱ノ型 霹靂一閃」しか使うことができません。しかし、彼はその一つの技を、誰にも真似できない領域まで磨き上げました。その究極形の一つが「霹靂一閃・八連」です。これは、常人では一度でも困難な神速の踏み込みと斬撃を、空中で八回連続して行うという離れ業。方向転換を繰り返しながら敵に迫るその動きは、もはや稲妻そのものです。
無限列車編での挫折と煉獄杏寿郎が遺したもの
この「八連」への進化を語る上で、無限列車編での出来事は避けて通れません。上弦の参・猗窩座※との戦いで、炎柱・煉獄杏寿郎※は命を燃やし尽くしました。夜明けまで戦い抜き、乗客と仲間たちを守り切ったその雄姿。しかし、善逸は鬼の圧倒的な力の前に、ただ見ていることしかできませんでした。守られるばかりだった自分への不甲斐なさ。そして、目の前で失われた偉大な柱の命。この経験が、善逸の心に大きな変化をもたらします。今まで駄々をこねて嫌がっていた単独任務にも、恐怖に震えながらも立ち向かうようになりました。
※猗窩座(あかざ):上弦の参の鬼。武術を極めることに執着している。
※煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう):鬼殺隊の最高位である「柱」の一人。炎の呼吸の使い手。
恐怖を乗り越え進化を遂げた善逸の「霹靂一閃」
煉獄の死を乗り越え、善逸は炭治郎たちと共につらく厳しい鍛錬から逃げなくなりました。以前の善逸は、極度の恐怖で気絶した時にしか本来の力を発揮できませんでした。しかし、遊郭編での彼は違います。仲間を守りたい、役に立ちたいという強い意志が、恐怖を上回ったのです。意識がはっきりしている状態で、自らの足で立ち、技を繰り出せるようになりました。無限列車編で見せた「霹靂一閃・六連」から、「八連」への進化。これは単なる技の回数が増えたということではありません。恐怖を意志の力で克服した、善逸の確かな精神的成長の証なのです。
初登場シーンを振り返る!11巻91話「作戦変更」での攻防
この二つの技が初めて連携を見せたのは、単行本11巻91話「作戦変更」でのことです。堕姫の頸※を斬るため、獣の呼吸の使い手である嘴平伊之助が、防御を捨てて真っ直ぐに突進します。その無防備な背中を、堕姫の帯が襲いました。まさにその瞬間、炭治郎が「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」を発動。伊之助と堕姫の間に割って入り、流れるような動きで帯の猛攻をすべて受け止め、捌いてみせます。炭治郎が攻撃を引きつけている、そのわずかな時間。その好機を見逃さず、善逸が「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連」で地を蹴りました。ジグザグの黄色い閃光が空を走り、堕姫の頸へと肉薄したのです。
※頸(くび):首のこと。
なぜ連携は成功した?二つの呼吸の相性と堕姫との戦況
この見事な連携は、決して偶然の産物ではありませんでした。二つの呼吸の特性が、完璧に噛み合っていたのです。炭治郎の「流流舞い」は、広範囲の攻撃を受け流し、敵の注意を引きつける「守りの技」「盾の技」としての役割を果たしました。一方、善逸の「霹靂一閃・八連」は、一点突破に特化した「攻めの技」「矛の技」です。炭治郎が信頼できる盾となってくれるからこそ、善逸は脇目もふらず、最短距離で敵の急所を突くことだけに集中できました。炭治郎が攻撃の的となり、善逸が仕留める。この明確な役割分担が、上弦の鬼を追い詰めるほどの力を生み出したのです。
伊之助を援護する一心!仲間を守るための決死の連携
さらに重要なのは、この連携が緻密な作戦会議の結果ではなく、土壇場で生まれた「仲間を思う心」の連携だったという点です。猪突猛進する伊之助の危うさを瞬時に察知し、身を挺して守りに入った炭治郎。そして、炭治郎が生み出したその一瞬の隙に、己の最強の技を叩き込む判断をした善逸。言葉を交わさずとも、互いの意図を理解し、最高の形で行動に移せる。そこには、これまでの過酷な任務を共に乗り越えてきた、揺るぎない信頼関係がありました。伊之助を助けたいという一心が生んだ、まさに阿吽の呼吸だったのです。
まとめ:流流舞いと霹靂一閃・八連が示す絆の力と今後の可能性
炭治郎の「流流舞い」と善逸の「霹靂一閃・八連」この二つの技の連携は、遊郭編の戦いを象徴する名場面であると同時に、鬼殺隊の若き剣士たちの成長物語そのものです。炭治郎の柔軟な対応力と仲間を思う優しさ。そして、恐怖を乗り越えて意志の力で剣を振るうまでに成長した善逸の強さ。それぞれが持つ特性を深く理解し、互いの弱さを補い合うことで、一人では到底届かない強大な敵とも渡り合えることを証明しました。この共闘を経て、炭治郎、善逸、伊之助の三人の絆は、より一層強く、確かなものになったと言えるでしょう。彼らがこれから先、どのように成長し、どんな連携を見せてくれるのか。この一戦は、鬼滅の刃という物語の魅力を改めて教えてくれる、希望に満ちた一閃でした。