『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編の強敵・半天狗の声優は誰?
アニメ『鬼滅の刃』の「刀鍛冶の里編」で、主人公・竈門炭治郎たちの前に立ちはだかった上弦の鬼。その中でも特に異質な存在感を放っていたのが、上弦の肆(じょうげんのし)である半天狗です。常に何かに怯え、涙を流しながら「ヒィィィ」と奇妙な悲鳴をあげる姿は、多くの視聴者に強烈な印象を与えました。その一方で、追い詰められると分裂し、強力な鬼たちを生み出すという恐ろしい能力を持っています。この不気味で複雑なキャラクターの声は、一体誰が担当しているのでしょうか。その声の主は、アニメ界のレジェンドとも言える、ある大ベテラン声優でした。
半天狗の本体を演じるのはベテラン声優・古川登志夫
半天狗の本体、あの特徴的な怯え声を見事に演じているのは、声優の古川登志夫(ふるかわ としお)です。非常に長いキャリアを持つ、まさに声優界の重鎮とも言える存在です。古川登志夫の出演が発表された際には、多くのアニメファンから驚きと納得の声が上がりました。長年の経験に裏打ちされたその確かな演技力で、半天狗というキャラクターの持つ多面的な恐怖を完璧に表現しています。若手の実力派声優が多く出演する『鬼滅の刃』において、古川登志夫のようなベテランの存在は、作品全体にさらなる深みと安定感をもたらしていると言えるでしょう。
古川登志夫はどんな声優?代表作を紹介
古川登志夫は、誰もが一度はその声を聞いたことがあると言っても過言ではないほど、数多くの有名作品に出演してきました。代表作としてまず挙げられるのが、国民的アニメ『ドラゴンボール』シリーズのピッコロです。主人公・孫悟空のライバルであり、後に頼れる仲間となる重要なキャラクターを長年にわたり演じています。また、大人気アニメ『ONE PIECE』では、主人公ルフィの義理の兄であるポートガス・D・エース役を担当。その熱い魂のこもった演技は、多くのファンの心を掴みました。さらに遡れば、『うる星やつら』の主人公・諸星あたる役も古川登志夫の代表作の一つです。これらのはっきりとした強い意志を持つキャラクターたちと、常に怯えている半天狗とでは、声のトーンや演技のアプローチが全く異なります。この演技の幅広さこそ、古川登志夫がレジェンドと呼ばれる理由の一つなのです。
そもそも半天狗はどんな鬼?その能力と特徴
ここで、半天狗という鬼について改めて確認しておきましょう。半天狗は、鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)配下である十二鬼月の中でも、上位6名にあたる「上弦の鬼」の一人です。その位は上弦の肆。普段は小柄な老人の姿をしており、額に大きなこぶがあるのが特徴です。性格は極めて臆病で、常に何者かに攻撃されるという恐怖に取り憑かれています。しかし、その臆病さこそが彼の能力の源です。彼は首を斬られるなど、窮地に陥ることで分裂する能力を持っています。分裂して現れるのは、「喜」「怒」「哀」「楽」の感情を司る、それぞれ異なる能力を持つ若い姿の鬼たちです。この能力によって、彼はたった一人で鬼殺隊の精鋭たちを相手に圧倒的な力を見せつけます。
古川登志夫が表現する半天狗の「怯え」と「狂気」
古川登志夫の演技の真骨頂は、半天狗の持つ単なる「怯え」だけではない、その奥に潜む「狂気」を表現している点にあります。半天狗は、自分が常に「可哀想な弱者」であると信じ込んでいます。過去に犯した罪も、他人が自分をいじめるからだと責任転嫁し、自分を正当化してきました。古川登志夫は、その歪んだ自己認識を、「ヒィィィ」という情けない悲鳴の中に巧みに織り交ぜています。ただ弱いだけでなく、自分の非を認めない独善的な一面が声色から感じられるのです。長年のキャリアで培われた深い洞察力と表現力がなければ、これほどまでに複雑なキャラクターを演じきることは難しいでしょう。視聴者は、彼の声を聞くだけで、キャラクターの持つ不気味さと異常性を肌で感じ取ることができます。
半天狗の分裂体①「積怒(せきど)」と声優・梅原裕一郎
半天狗が分裂して最初に現れる鬼の一人が、「怒」の感情を司る積怒(せきど)です。常に眉間にしわを寄せ、周囲に対して激しい怒りを露わにしています。錫杖(しゃくじょう)を武器とし、そこから強力な雷を放つ能力を持ちます。この積怒の声を担当しているのは、声優の梅原裕一郎(うめはら ゆういちろう)です。梅原裕一郎は、そのクールで知的な低音ボイスが魅力で、多くのアニメで主要なキャラクターを演じています。彼の持つ落ち着いた声質が、積怒の内に秘めた静かな、しかし確固たる怒りを完璧に表現しており、キャラクターの威圧感を一層高めています。
半天狗の分裂体②「可楽(からく)」と声優・石川界人
次に紹介するのは、「楽」の感情を司る可楽(からく)です。常に遊びのような感覚で戦いを楽しみ、不敵な笑みを浮かべているのが特徴です。うちわを武器にしており、一振りで強烈な突風を巻き起こすことができます。この軽薄そうに見えて底知れない強さを持つ可楽を演じているのは、声優の石川界人(いしかわ かいと)です。石川界人は、熱血キャラクターから冷静な役柄まで幅広くこなす実力派として知られています。彼の演じる可楽は、楽しげな口調の中にも冷酷さを感じさせ、予測不能なキャラクターの魅力を最大限に引き出しています。
半天狗の分裂体③「空喜(うろぎ)」と声優・武内駿輔
三番目の分裂体は、「喜」の感情を司る空喜(うろぎ)です。鳥のような翼を持ち、空中を自在に飛び回ることができます。常に喜びの表情を浮かべており、甲高い声で叫びながら攻撃を仕掛けてきます。その武器は、凄まじい威力を持つ超音波です。この空喜の声を担当しているのは、声優の武内駿輔(たけうち しゅんすけ)です。武内駿輔は、非常に深みのある低音ボイスで知られていますが、空喜ではそのイメージを覆すような、甲高く狂気じみた喜びの声を披露しています。彼の演技の幅広さが、空喜というキャラクターの異常な明るさと恐ろしさを際立たせています。
半天狗の分裂体④「哀絶(あいぜつ)」と声優・斉藤壮馬
四番目の分裂体として現れるのが、「哀」の感情を司る哀絶(あいぜつ)です。常に物悲しい表情を浮かべ、ネガティブな言葉を口にしながら戦います。彼の武器は十文字槍(じゅうもんじやり)で、その鋭い突きは驚異的な射程と威力を誇ります。この哀絶を演じているのは、声優の斉藤壮馬(さいとう そうま)です。斉藤壮馬は、その甘く中性的な声質で多くのファンを魅了しています。彼の演じる哀絶は、ただ悲しんでいるだけでなく、その悲しみからくる諦観や冷酷さを感じさせます。その繊細な演技が、哀絶というキャラクターに深い奥行きを与えています。
最強の分裂体「憎珀天(ぞうはくてん)」の声優は山寺宏一
そして、積怒が可楽、空喜、哀絶を吸収することで生まれる、半天狗の最強の分裂体が憎珀天(ぞうはくてん)です。その姿は少年のようですが、背中に複数の太鼓を持ち、これまでに分裂した鬼たちの能力をすべて使うことができます。その力は上弦の鬼の中でも屈指のものです。この憎珀天の声を担当しているのは、なんと声優の山寺宏一(やまでら こういち)です。「七色の声を持つ男」として知られ、数えきれないほどのキャラクターを演じてきた、まさにレジェンド中のレジェンドです。憎珀天の持つ、幼い姿とは裏腹の圧倒的な威圧感と、炭治郎たちを「極悪人」と断じる独善的な怒りを見事に表現しています。古川登志夫に始まり、最後に山寺宏一が登場するというキャスティングは、制作陣のこのキャラクターにかける並々ならぬ情熱を感じさせます。半天狗という一体の鬼を表現するために、これほど豪華な声優陣が集結したことは、アニメ史に残る出来事と言っても良いでしょう。