『鬼滅の刃』最終選別、炭治郎の前に立ちはだかった異形の鬼の声優は?
主人公・竈門炭治郎が、鬼殺隊の剣士となるための最終関門「最終選別」。藤の花が咲き誇る藤襲山(ふじかさねやま)で生き残りをかけて戦う中、彼の前に一体の異形の鬼が立ちはだかりました。緑色の巨体に、無数の腕がうごめくその姿。他の鬼とは明らかに一線を画すその圧倒的な威圧感と絶望感は、多くの視聴者に衝撃を与えました。この物語の序盤における最大の壁「手鬼」の声は、声優界を代表する、あるレジェンドが演じています。
藤襲山(ふじかさねやま)の主・手鬼を演じるのはレジェンド・子安武人
最終選別の地に47年間も幽閉され、数多くの剣士候補生を喰らってきた手鬼。この重要な敵キャラクターの声を担当しているのは、唯一無二の存在感を放つ声優・子安武人(こやす たけひと)です。彼のキャスティングが明かされた時、多くのアニメファンは「序盤の敵に子安武人⁉」と驚愕しました。しかし、その重厚でカリスマ性あふれる声は、手鬼というキャラクターに、単なるやられ役ではない、計り知れないほどの深みと格を与えました。
子安武人はどんな声優?カリスマ悪役を演じさせたら随一
子安武人は、長年のキャリアの中で数えきれないほどの役を演じてきましたが、特に彼が演じる「悪役」は、多くのファンの記憶に強く刻まれています。その代表格が、『ジョジョの奇妙な冒険』の宿敵・DIOです。彼の演じる悪役は、ただ邪悪なだけでなく、確固たる信念とカリスマ性を持ち、時に主人公をも凌ぐほどの魅力を放ちます。他にも『進撃の巨人』のジーク・イェーガー役など、物語の鍵を握る重要な悪役を数多く担当。子安武人の声は、キャラクターに絶対的な存在感を与えるのです。
そもそも手鬼とはどんなキャラクター?鱗滝左近次への憎悪
手鬼は、まだ人間だった江戸時代に鬼舞辻無惨によって鬼にされました。その後、鬼殺隊の剣士であった鱗滝左近次(うろこだき さこんじ)によって捕らえられ、最終選別の地である藤襲山に閉じ込められます。それ以来、彼は自分を捕らえた鱗滝を激しく憎み、復讐として彼の育てる弟子たちを狙って殺し、喰らうようになりました。特に、鱗滝の弟子が目印としてつけている「狐の面」は、彼の憎悪の象徴となっています。
手鬼の能力と炭治郎を追い詰めた巨体と硬い首
手鬼は、藤襲山で50人近くの人間を喰らったことで、他の鬼とは比較にならないほどの巨体と再生能力を獲得しました。その体からは無数の腕を自在に伸ばすことができ、その長いリーチとパワーは、未熟な剣士では到底太刀打ちできるものではありません。さらに、彼の最大の武器は、鍛え上げられた非常に硬い首です。並の剣士では、その日輪刀をもってしても斬ることすらできず、多くの弟子たちがこの硬い首の前に絶望し、命を落としていきました。
子安武人の真骨頂!手鬼の長年の怨念と恐怖の表現
子安武人の演技は、手鬼の持つ47年間という長きにわたる怨念を完璧に表現していました。彼の低く響く声は、鱗滝への憎しみを語る時に、底知れない深みを与えます。「また俺の所に来たな、可愛い狐が」というセリフには、新たな獲物を見つけた喜びと、これまでの弟子たちを葬ってきたという歪んだ自負が込められています。子安武人の声によって、手鬼はただの異形の怪物ではなく、知性と確固たる憎悪を抱いた、恐ろしくも理知的な敵として炭治郎の前に立ちはだかったのです。
なぜ手鬼役に子安武人がキャスティングされたのか?
手鬼は、物語の序盤に登場し、炭治郎に倒される敵です。しかし、彼は炭治郎が鬼殺隊としての一歩を踏み出すための、そして錆兎(さびと)や真菰(まこも)の無念を晴らすための、極めて重要な壁として存在します。この重要な役に、子安武人という誰もが知る大物声優を起用したことは、制作陣の強い意志の表れです。彼の声が持つ圧倒的な説得力によって、視聴者は「こんな強大な敵に、炭治郎は本当に勝てるのか?」という、手に汗握る緊張感と絶望感を味わうことができたのです。
錆兎(さびと)や真菰(まこも)との悲しい因縁
手鬼がこれまでに殺してきた鱗滝の弟子は13人。その中には、炭治郎を指導した錆兎と真菰も含まれていました。特に実力者であった錆兎は、手鬼以外の全ての鬼を斬り伏せましたが、長年の戦いで刀が摩耗し、最後は手鬼に頭を握り潰されて殺されてしまいました。手鬼は、彼らを殺したことを自慢げに語り、炭治郎を挑発します。この因縁こそが、炭治郎が恐怖を乗り越え、手鬼に立ち向かう大きな原動力となりました。
炭治郎の覚悟の一太刀!手鬼の悲しい過去と最期
圧倒的な力の差の前に絶望しかけた炭治郎でしたが、亡き錆兎や真菰の魂に叱咤され、己を奮い立たせます。そして、鱗滝から教わった全ての型の中で最も威力の高い初手、「水の呼吸・壱ノ型 水面斬り(みなもぎり)」を放ち、ついに手鬼の硬い首を斬り落としました。消えゆく意識の中、手鬼は人間だった頃の記憶を取り戻します。まだ幼い少年だった頃、夜になっても帰らない自分を案じてくれた兄。その兄の手を、ただもう一度握りたかった。その純粋な想いを思い出し、彼は涙を流しながら静かに塵へと還っていきました。
子安武人の名演が光る!『鬼滅の刃』の序盤を支えた名悪役
手鬼は、子安武人という名優の魂の演技によって、『鬼滅の刃』という壮大な物語の幕開けを飾るにふさわしい、忘れられない悪役となりました。彼の存在と悲しい最期は、「鬼は、元は人間だった。自分と同じ人間だったんだ」という、作品全体を貫く重要なテーマを、物語の初期段階で視聴者に強く印象付けました。子安武人が演じた手鬼は、間違いなく『鬼滅の刃』の歴史にその名を刻む、偉大な名悪役の一人です。