プイッ
鬼滅の刃47話で鬼の習性として本来耐えられるはずがない人間の血を近くで垂らされても人を襲わなかった禰豆子が描かれたシーン。プイッとする禰豆子が可愛い。禰豆子よくやりました!
竈門禰豆子の「プイッ」とは?アニメ・漫画の該当シーンを徹底解説
『鬼滅の刃』という物語の中で、言葉を発しないにもかかわらず、多くの人々の記憶に深く刻まれる名シーンがあります。それが、竈門禰豆子が見せた「プイッ」という行動です。この印象的な場面は、アニメでは「刀鍛冶の里編」にあたる第47話「日輪刀」で描かれました。原作漫画では、単行本13巻の第111話「芸術家気取り」が該当します。
このシーンの舞台は、鬼殺隊の当主である産屋敷耀哉の邸宅です。かつて柱合会議※1で行われた、禰豆子が人間を襲わないことの証明が、再び試されることになります。風柱・不死川実弥が自らの腕を傷つけ、鬼にとって抗いがたい魅力を持つ「稀血」※2を滴らせます。その血を禰豆子の目の前に差し出し、彼女の反応を試したのです。鬼であれば、たとえどれだけ理性を保っていても、その誘惑に抗うことは極めて困難です。しかし、禰豆子は血に顔を近づけるものの、次の瞬間、顔を背けて「プイッ」とそっぽを向きました。この可愛らしい仕草こそ、彼女が鬼の本能に完全に打ち勝ったことを示す、感動的な名シーンなのです。
※1 柱合会議(ちゅうごうかいぎ):鬼殺隊の最高位に立つ9人の剣士「柱」が、当主である産屋敷家に集まって行う定期報告会議のこと。
※2 稀血(まれち):鬼にとって、特に栄養価が高く、ご馳走とされる珍しい血液を持つ人間のこと。普通の人間数十人から百人分に匹敵するとも言われています。
なぜ名言?言葉を超えた「プイッ」に込められた3つの意味
「プイッ」はセリフではありません。しかし、多くのファンがこれを「名言」として記憶しています。それは、この一つの行動に、言葉以上の深い意味が込められているからです。大きく分けて3つの意味を読み取ることができます。
一つ目は、鬼の本能に対する完全な勝利です。鬼は人間を食べることで生きる存在。その根源的な欲求を、禰豆子は自らの意志で拒絶しました。これは、彼女が単に「人を襲わない鬼」であるだけでなく、鬼という存在の在り方そのものを超えようとしている証です。
二つ目は、兄・炭治郎への揺るぎない信頼と絆の証明です。「人を守る」という兄との約束を、何よりも大切にしていることが示されました。目の前の誘惑よりも、兄の言葉と想いを優先する。その健気で強い心が、この行動には表れています。
三つ目は、彼女自身の人間性の証明です。鬼の体に変わってしまっても、禰豆子の心の中には、人間としての尊厳や優しさが確かに残っている。その魂の輝きが、鬼の本能という分厚い壁を打ち破った瞬間でした。この「プイッ」は、彼女が守られるべき存在から、自らの意志で戦う一人の人間であることを力強く示したのです。
鬼の習性に抗う!禰豆子の精神力の源泉
では、なぜ禰豆子は鬼の強烈な本能に打ち勝つことができたのでしょうか。その精神力の源泉は、いくつかの要因によって形作られています。最も大きな力となっているのは、元水柱である鱗滝左近次が、眠っている禰豆子にかけ続けた暗示です。
「人間は皆お前の家族だ。人間を守れ。鬼は敵だ」という言葉は、彼女の無意識の奥深くに刷り込まれています。この暗示が、鬼としての衝動が湧き上がった時に、強力なブレーキとして機能しているのです。
また、人間を喰らう代わりに睡眠をとることでエネルギーを補給するという、彼女ならではの体質も大きく関係しています。これにより、他の鬼が常に抱えている飢餓感から、ある程度解放されているのです。しかし、何よりも強い力は、兄・炭治郎をはじめとする家族への深い愛情でしょう。失われた家族の記憶と、今そばにいる兄を守りたいという一心。その純粋な想いが、他の何ものにも勝る強大な力となり、彼女を支えているのです。
不死川実弥の「稀血」でも揺るがなかった理由
この証明の場面で重要だったのは、試したのが不死川実弥の「稀血」であったという点です。稀血は鬼にとって、極上のご馳走のようなもの。その香りを嗅いだだけで理性を失う鬼も少なくありません。下弦の鬼でさえ、稀血を持つ人間を喰らえば上弦に匹敵する力を得られると言われるほどです。
つまり、禰豆子が耐えたのは、並大抵の誘惑ではありませんでした。鬼としての本能を最大限に刺激される、究極の試練だったのです。にもかかわらず、彼女は顔を背けました。これは、鱗滝の暗示や睡眠による体質だけでは説明がつかない、禰豆子自身の意志の力が働いた結果と言えます。
どれだけ強力な誘惑であろうと、兄との約束、そして人間を守るという自らの誓いは決して破らない。その鋼のような決意が、稀血の魔力をも上回ったのです。この事実は、その場にいた産屋敷耀哉や他の柱たちにも、禰豆子が特別な存在であることを強く印象付けました。
「可愛い」だけじゃない!ギャップが魅力の禰豆子
禰豆子の魅力は、その多面性にあります。普段は幼子のように無邪気な姿を見せ、体を小さくして炭治郎の背負う箱の中で眠っています。その姿は、誰もが「可愛い」と感じるでしょう。しかし、いざ戦いとなれば、鬼としての驚異的な身体能力と再生能力を駆使して、強力な鬼とも渡り合います。
そして、今回の「プイッ」というシーンで見せたのは、そのどちらでもない第三の顔です。それは、静かながらも何ものにも屈しない、強い意志を持った姿でした。可憐な少女のような仕草の中に、鬼の本能をねじ伏せるほどの精神的な強さを秘めている。この可愛らしさと力強さ、そして内面の強さというギャップこそが、竈門禰豆子というキャラクターをこれほどまでに魅力的にしている理由の一つなのです。ファンが彼女に惹かれるのは、守ってあげたくなるような愛らしさと、いざという時には頼りになる強さの両方を兼ね備えているからでしょう。
産屋敷耀哉も証明!禰豆子が鬼殺隊に認められた瞬間
この「プイッ」という行動は、物語の上でも非常に重要な転機となりました。これまでの禰豆子は、多くの柱たちから「鬼であり、鬼殺隊の脅威となりうる存在」として、その存在を疑問視されていました。炭治郎がいくら言葉で説明しても、鬼への憎しみが深い柱たちを納得させるのは困難でした。
しかし、目の前で稀血の誘惑に打ち勝つという、動かぬ証拠が示されたのです。これにより、産屋敷耀哉が「竈門禰豆子は人を襲わない。私と鱗滝、冨岡、そして炭治郎が命を懸けて証明する」と宣言した言葉の正しさが、疑いようのない事実として確定しました。
この一件を経て、禰豆子は正式に鬼殺隊の一員として、鬼と戦うことを認められるようになります。炭治郎と禰豆子が二人で歩んできた道が、ついに鬼殺隊という大きな組織に受け入れられた、画期的な瞬間だったのです。彼女の小さな抵抗が、鬼と人間の共存という、誰もが不可能だと考えていた未来への扉を、わずかにこじ開けたと言えるでしょう。
言葉を発しない禰豆子だからこそ響く「行動」の名言
禰豆子は常に竹の口枷※3を咥えているため、物語の中で言葉を発する機会がほとんどありません。感情表現は、仕草や表情、そして「むー」といったうなり声のような音に限られています。だからこそ、彼女の一つ一つの行動が、非常に雄弁に彼女の心を物語ります。
もし彼女が言葉で「私は人を襲わない」と言ったとしても、ここまでの感動は生まれなかったかもしれません。鬼が何を言おうと、誰も信じなかったでしょう。しかし、行動は嘘をつきません。鬼としての本能が最も求めるものを目の前にして、それを拒絶するという行動。これ以上に明確な意思表示はありません。
「プイッ」は、何万の言葉よりも力強く、彼女の決意と人間性を伝えた「行動の名言」なのです。言葉を持たないキャラクターだからこそ、その行動が持つ意味の重みが際立ち、私たちの心に深く響くのです。
※3 口枷(くつわ):ここでは、禰豆子が人を噛まないように、また鬼としての本能を抑えるために口にくわえている竹筒のこと。
海外の反応は?世界中が魅了された「Pui!」
『鬼滅の刃』は日本国内だけでなく、世界中で絶大な人気を誇っています。そして、禰豆子の「プイッ」のシーンは、国境を越えて多くの海外ファンの心を掴みました。海外のファンコミュニティやSNSでは、このシーンに対して「so cute!(とても可愛い!)」「Her willpower is insane!(彼女の意志の力は半端じゃない!)」「A truly powerful moment.(本当に力強い瞬間だ)」といった、称賛の声が溢れています。
禰豆子の可愛らしい仕草と、その裏にある精神的な強さというギャップは、文化や言語の違いを超えて共感を呼ぶ普遍的な魅力を持っているようです。特に、言葉ではなく行動で意志を示すという描写は、映像作品として非常に分かりやすく、感動的に伝わったのでしょう。このシーンは、海外ではしばしば「Nezuko’s ‘Hmph!’ moment」や「Pui! scene」と呼ばれ、禰豆子を象徴する名場面の一つとして親しまれています。
まとめ:竈門禰豆子の「プイッ」は鬼滅の刃を象徴する名シーン
ここまで、竈門禰豆子の「プイッ」という名シーンについて、様々な角度から解説してきました。この行動は、単に鬼の少女が見せた可愛らしい仕草というだけではありません。それは、鬼の本能に打ち勝ち、人間としての尊厳を守り抜いた、力強い意志の表明でした。
兄・炭治郎との深い絆を証明し、鬼殺隊にその存在を認めさせるきっかけとなった、物語の重要な転換点でもあります。言葉を発しない禰豆子だからこそ、この「行動の名言」は私たちの心に強く、そして深く響きました。『鬼滅の刃』が描くテーマである「兄妹の絆」や「人間性の賛歌」を、この上なく見事に体現したシーンと言えるでしょう。可愛くて、健気で、そして誰よりも強い心を持つ少女、竈門禰豆子。彼女の「プイッ」は、これからも多くのファンの心の中で、輝き続ける名シーンであり続けるはずです。