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カナヲは
どうしたかった?
どうでも
いいの
全部
どうでも
いいから
自分で決められ
ないの
この世に
どうでもいい
ことなんて
無いと思うよ
きっと
カナヲは心の声が
小さいんだろうな
うーん
指示に従うのも
大切なことだけど
7巻53話にて炭治郎に言ったセリフ。
貧しい家庭に生まれたカナヲは幼少期に両親から虐待を受けていた。
泣くと両親から暴力を振るわれるため、
カナヲは何も感じない感情を持っていました。
人買いに売られそうになったところを胡蝶姉妹に救われます。
カナヲは自分で物事を決めることができません。
カナエはカナヲにコインを与えました。
コイントスで物事を決めるために。
蝶屋敷にて炭治郎に話しかけられたカナヲ。
コイントスで会話するかどうかを決めます。
その結果、炭治郎と会話をします。
その時、炭治郎から何故自分で決めないのかと聞かれました。
炭治郎の質問に対してカナヲはこのセリフを言いました。
そんなカナヲに炭治郎は言います。
「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ」と。
この後からカナヲは自分の心に素直に生きるようになります。
はじめに:栗花落カナヲの名言「どうでもいい」に共感するあなたへ
「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」
これは、大人気漫画『鬼滅の刃』に登場するキャラクター、栗花落カナヲ(つゆり かなを)が放った一言です。とても静かで、どこか寂しさを感じさせるこの言葉に、なぜか心が揺さぶられた人は少なくないでしょう。自分の意見を言うのが苦手だったり、何かを選ぶ場面でつい人任せにしてしまったり。カナヲの姿に、自分自身を重ねてしまう瞬間があるのかもしれません。
彼女の言葉は、単なる諦めではありません。その裏には、深く、そして悲しい理由が隠されています。この記事では、栗花落カナヲという少女がなぜ「自分で決められない」状態になってしまったのか、その背景をじっくりと紐解いていきます。そして、主人公である竈門炭治郎(かまど たんじろう)との出会いを経て、彼女がどのように変化していったのかを追いかけます。この記事を読み終える頃には、カナヲの物語を通して、私たちが「自分で決める」ことの重みと、その一歩を踏み出すための温かいヒントを見つけられるはずです。
この名言が登場する『鬼滅の刃』の重要シーンを振り返る
この象徴的なセリフが登場するのは、物語の中で炭治郎たちが蝶屋敷(ちょうやしき)で修行と療養に励んでいる場面です。任務を終え、蝶屋敷を去ることになった炭治郎は、お世話になったカナヲに別れの挨拶をしにいきます。しかし、カナヲはただ静かに微笑むばかりで、何も言葉を発しません。
不思議に思った炭治郎が尋ねると、カナヲは懐から一枚の銅貨を取り出します。そして、指示されたこと以外は、この銅貨を投げて裏か表かで行動を決めていると打ち明けるのです。驚く炭治郎に対して、彼女は冒頭の言葉を静かに告げます。「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」
自分の意志で何かを決めることを、彼女は放棄していました。誰かに従うか、偶然に身を任せるか。そのどちらかでしか、行動を選べない状態だったのです。このシーンは、カナヲが抱える心の闇を初めて読者に明かす、非常に重要な場面と言えます。彼女の可愛らしい見た目や、鬼殺隊としての優れた能力の裏に、深い心の傷が隠されていることを強く印象付けました。
なぜカナヲは「どうでもいい」と思うようになった?壮絶な過去と心の傷
カナヲが自分の感情に蓋をし、意志を放棄してしまったのには、あまりにも過酷な幼少期の経験が関係しています。彼女は、貧しい家庭に生まれ、親から凄惨な虐待を受けて育ちました。食事もろくに与えられず、殴る蹴るの暴力を日常的に受ける日々。寒さや空腹で泣き叫んでも、親は全く意に介しません。
このような環境では、自分の感情や欲求を表に出すことは、さらなる暴力を誘発する危険な行為でしかありません。痛い、悲しい、お腹が空いた。そうした人間として当たり前の感覚さえも、生き延びるためには押し殺す必要があったのです。感情を表現することをやめ、心を無にすることで、彼女はかろうじて自分を守っていました。
やがて親に人買いへ売られ、まさに心が壊れてしまう寸前だったところを、胡蝶しのぶ・カナエの姉妹に救い出されます。しかし、長年続いた虐待によって受けた心的外傷(しんてきがいしょう)※注1 はあまりにも深く、すぐには元に戻りませんでした。話しかけられても答えず、食事も促されなければ摂らない。そんなカナヲを見かねたカナエが、「何か決められない時は、これを投げて決めなさい」と、あの銅貨を渡したのです。それは、自分で決めることへのリハビリの第一歩であり、優しさから生まれた策でした。しかし、それが結果的に、カナヲが自分の意志を偶然に委ね続けるきっかけともなってしまったのです。
※注1 心的外傷(しんてきがいしょう):心に残る深い傷となるような、衝撃的な出来事のこと。トラウマとも呼ばれます。
「自分で決められない」ことの心理的背景とは?
カナヲの物語は特別に感じるかもしれませんが、「自分で決められない」という悩みは、多くの人が一度は経験する普遍的なものです。では、なぜ私たちは物事を自分で決めるのが難しく感じてしまうのでしょうか。
一つには、失敗への恐れがあります。もし自分で選んだ結果が良くなかったらどうしよう、誰かに迷惑をかけてしまったらどうしよう、と考えると、決断すること自体が怖くなってしまいます。他人に決めてもらえば、たとえ結果が悪くても「あの人が言ったから」と責任を転嫁できるため、精神的な負担が軽くなるのです。
また、自己肯定感の低さも大きく関係しています。自分に自信がないと、「自分の選択は間違っているのではないか」という不安が常に付きまといます。自分の価値を低く見積もってしまい、自分の感覚や考えを信じることができません。カナヲのように、過去の経験から「自分の意見には価値がない」と思い込んでいるケースもこれにあたります。
さらに、現代社会は情報過多です。選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなる「決定麻痺」という状態に陥ることがあります。何を基準に選べば良いのか分からなくなり、考えること自体が疲れてしまい、「もうどうでもいいや」と投げやりな気持ちになってしまうのです。カナヲの「どうでもいい」という言葉には、こうした複雑な心理が凝縮されていると考えることもできます。
心の扉を開いた炭治郎の言葉「表が出たらカナヲは心のままに生きる」
カナヲの凍てついた心を溶かすきっかけとなったのが、主人公・竈門炭治郎の存在です。彼は、カナヲが銅貨で行動を決めていることを知っても、それを否定しませんでした。むしろ、彼女の事情を察し、その上で真正面から向き合おうとします。
炭治郎は「その銅貨、貸してくれないか」と頼み、こう宣言します。「投げて表が出たら、カナヲはこれからは心のままに生きる」彼は、カナヲのルールの上で、彼女自身が自分の心に従うという選択肢を与えようとしたのです。
そして、炭治郎は高く銅貨を投げ上げ、力強くキャッチします。彼が開いた手の上にあったのは「表」この瞬間、カナヲの世界は大きく揺らぎ始めます。炭治郎は「頑張れ!!人は心が原動力だから 心はどこまでも強くなれる!!」と力強い言葉をかけ、彼女の手を強く握ります。偶然の結果ではありましたが、炭治郎の純粋で力強い想いが、カナヲの心の奥深くに眠っていた「変わりたい」という小さな願いに火を灯したのです。
この出来事は、カナヲにとって単なる偶然以上の意味を持ちました。誰かが自分の未来を本気で案じ、心のままに生きることを肯定してくれた初めての経験だったからです。この出会いがなければ、カナヲはずっと心を閉ざしたままだったかもしれません。
コイントスが象徴するもの:きっかけが自己決定を後押しする
炭治郎が行ったコイントスは、非常に示唆に富んでいます。実は、炭治郎は銅貨を投げる際に少し細工をし、必ず表が出るようにしていました。「偶然なんかじゃない」「君が変わるきっかけが欲しかっただけ」と、彼は後に心の中で語っています。
これは、自己決定において「きっかけ」がいかに重要であるかを示しています。自分一人ではなかなか一歩を踏み出せない時、誰かの言葉や、ほんの些細な出来事が背中を押してくれることがあります。それは占いでも、おみくじでも、あるいは尊敬する人のアドバイスでも良いのかもしれません。
大切なのは、結果そのものではなく、「これを機に自分で決めてみよう」と思えるかどうかです。炭治郎のコイントスは、カナヲにとってまさにその「きっかけ」でした。「表が出たから」という理由付けを得て、彼女は初めて「心のままに生きる」という選択肢を意識することができたのです。
もし自分で何かを決めることに躊躇してしまうなら、何か小さなきっかけを探してみるのも一つの手です。例えば、「この曲を聴き終わったら勉強を始めよう」とか、「次の信号が青だったら、気になっていたお店に入ってみよう」とか。そうした小さな儀式が、大きな決断への練習になることもあります。
カナヲの変化と成長:自分の意志で戦い、未来を選ぶ姿
炭治郎との出会いを経て、カナヲは少しずつですが、確実に変わっていきます。以前はただ指示を待つだけだった彼女が、自分の頭で考え、仲間とコミュニケーションを取ろうとする姿が見られるようになります。
その成長が最も顕著に表れたのが、物語終盤の上弦の弐・童磨(どうま)との戦いです。童磨は、かつてカナヲの恩人である胡蝶しのぶを殺した因縁の相手でした。その強大な敵を前に、カナヲは恐怖に震えながらも、自らの意志で立ち向かいます。
この戦いの中で、彼女はしのぶから託された作戦を実行するために、重大な決断を迫られます。失明のリスクがある強力な技「花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼(ひがんしゅがん)」を使うかどうか。かつての彼女なら、銅貨を投げて決めていたかもしれません。しかし、そこにいたのは、自分の意志で未来を選ぶことを決めた一人の剣士でした。
彼女は、仲間を助けたい、師の仇を討ちたいという強い想いから、自らの判断で彼岸朱眼の使用を決意します。これは、カナヲが「どうでもいい」という呪縛から完全に解き放たれ、自分の感情と意志で未来を掴み取った瞬間でした。大切なものを守るためなら、失明という大きな代償も厭わない。その姿は、かつて心を殺して生きていた少女の面影を感じさせないほど、強く、美しいものでした。
「どうでもいい」から卒業するために私たちができること
カナヲの物語は、私たちに「どうでもいい」という無気力な状態から抜け出すためのヒントを与えてくれます。もし、あなたがかつてのカナヲのように、自分で決めることに疲れや諦めを感じているのなら、焦る必要はありません。少しずつ、できることから始めてみましょう。
まずは、極めて小さなことから自分で決める練習をしてみることです。例えば、今日の昼食のメニュー、コンビニで買う飲み物、帰り道に通るルートなど、どんな些細なことでも構いません。「なんとなく」ではなく、「今日はこれが食べたいから選ぶ」と意識するだけで、それは立派な自己決定のトレーニングになります。
次に、自分の感情に気づく習慣をつけることも大切です。嬉しい、楽しい、悲しい、腹が立つ。そうした感情が湧き上がってきた時に、「今、自分はこう感じているな」と心の中で確認するのです。カナヲが感情を押し殺していたように、私たちは忙しい日常の中で自分の本当の気持ちを見過ごしがちです。自分の感情を認識することが、自分の「好き」や「嫌い」を知る第一歩となります。
自分の「心の声」に耳を傾ける具体的な方法
自分の心の声を聞く、と言われても、具体的にどうすれば良いのか分からないかもしれません。そんな時は、静かな時間を作って、自分と対話するのがおすすめです。一日の中で、ほんの5分でも構いません。スマートフォンやテレビから離れ、静かな場所で目を閉じてみましょう。
そして、自分自身にいくつか質問を投げかけてみます。「今日、一番うれしかったことは何だろう?」「今、一番気になっていることは?」「本当はどうしたいと思っている?」など。答えがすぐに出なくても問題ありません。大切なのは、外部からの情報や他人の意見に惑わされず、自分自身の内側に意識を向ける時間を持つことです。
また、感じたことや考えたことをノートに書き出すのも非常に効果的です。文章にする必要はありません。単語の羅列でも、イラストでも良いのです。頭の中にあるモヤモヤを外に出すことで、自分の考えが整理され、本当に望んでいることが見えてくることがあります。これは、誰にも見せる必要のない、自分だけの心の対話ノートです。
炭治郎がカナヲに「心のままに生きる」きっかけを与えたように、信頼できる友人に話を聞いてもらうのも良いでしょう。アドバイスを求めるのではなく、ただ自分の気持ちを話すだけでも、心は軽くなるものです。
まとめ:カナヲのように、自分の意志で未来を切り拓こう
栗花落カナヲの「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」という言葉は、壮絶な過去によって心を閉ざさざるを得なかった彼女の悲痛な叫びでした。しかし、彼女は炭治郎という温かい心に触れ、自分の意志を取り戻すきっかけを掴みます。
そして最終的には、自分の命を懸けてでも守りたいもののために、自ら未来を選択する強さを手に入れました。彼女の物語は、人は誰でも、どんな過去を背負っていても、きっかけ一つで変わり、成長できるという希望を教えてくれます。
もし今、あなたが何かを決めることに臆病になっていたり、「どうでもいい」という気持ちに支配されそうになっていたりするなら、ぜひカナヲのことを思い出してください。小さな選択を積み重ね、自分の心の声に正直になることで、道は拓けていきます。
あなたの心は、あなたが思っている以上に強く、しなやかです。カナヲがそうであったように、あなたの心が原動力となり、望む未来を切り拓いていくことを心から願っています。