
(C)吾峠呼世晴/集英社
三か月間
飲み続けるの
この薬!?
これ飲んだら
飯食えないよ
すげぇ苦いんだけど
つらいんだけど
ていうか
薬飲むだけで
俺の腕と足
治るわけ!?
ほんと!?
静かに
してください~
もっと
説明して
誰か
一回でも
飲み損ねたら
どうなるの!?
ねぇ
まだ騒いでるの
あの人…
我妻善逸の魂の叫び!「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」はどんなセリフ?
人気作品「鬼滅の刃」には、数多くの個性的なキャラクターが登場します。
その中でも、ひときわ異彩を放っているのが我妻善逸です。
普段は信じられないほどの臆病者で、泣き虫。
すぐに任務から逃げ出そうとしては、一緒にいる竈門炭治郎を困らせます。
しかし、極度の恐怖に陥り気絶すると、本来の実力を発揮するのです。
その眠っている時の強さは、まさに圧巻の一言。
この普段の情けない姿と、いざという時の頼もしさのギャップが、多くのファンを惹きつけてやみません。
そんな善逸の人間性を、これ以上なく表している名言があります。
それが、今回ご紹介する「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」という魂の叫びです。
このセリフは、シリアスな戦いが続く物語の中で、ふと訪れる日常の一コマで発せられました。
思わず笑ってしまうこの一言には、善逸の魅力がぎゅっと凝縮されています。
一体どんな状況で、この名言は飛び出したのでしょうか。
その背景を知れば、善逸というキャラクターをもっと好きになること間違いありません。
これから、この名言が生まれたシーンや、善逸が抱えていた苦悩について、じっくりと見ていきましょう。
【ネタバレ】名言が登場するアニメ・漫画の該当シーンを解説
では、あの印象的なセリフは、物語のどの部分で登場するのでしょうか。
具体的な場所を知って、もう一度見返したい方もいるでしょう。
アニメでは、第一期の最終話にあたる第26話「新たなる任務」でこのシーンを見ることができます。
漫画では、単行本の6巻に収録されている第48話「蝶屋敷」が該当します。
この時期の物語は「機能回復訓練」編と呼ばれています。
那田蜘蛛山(なたぐもやま)での壮絶な戦いを終えた炭治郎、善逸、伊之助。
三人は蟲柱・胡蝶しのぶが管理する「蝶屋敷」で、傷の治療を受けることになります。
蝶屋敷では、治療だけでなく、なまった体を元に戻すための厳しいリハビリ、いわゆる機能回復訓練が行われていました。
問題のシーンは、その療養生活の中で訪れます。
ある日、蝶屋敷の少女、神崎アオイが善逸のもとへ薬を持ってきます。
お盆の上には、見るからに体に悪そうな色の液体が入った湯呑みが一つ。
善逸は、その禍々しいオーラを放つ薬を前に、すでに顔を引きつらせています。
意を決して一気に飲み干しますが、その直後でした。
「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」
まさに絶叫。静かな蝶屋敷に、善逸の悲痛な叫びが響き渡るのでした。
このあまりにも正直なリアクションが、視聴者や読者の笑いを誘ったのです。
そもそもなぜ薬を?善逸が負った那田蜘蛛山での深手
そもそも、なぜ善逸はあんなにも苦い薬を飲まなければならなかったのでしょうか。
ただの風邪薬や栄養ドリンクではありません。
その理由は、蝶屋敷に来る前の戦い、那田蜘蛛山での出来事にあります。
炭治郎たちと離れ、一人で山の中をさまよっていた善逸。
そこで遭遇したのが、十二鬼月(※注釈:鬼の始祖・鬼舞辻無惨直属の精鋭)である累(るい)の配下、蜘蛛の鬼(兄)でした。
この鬼が使う毒は、人間を蜘蛛に変えてしまうという恐ろしいもの。
善逸は、毒を体に注入されてしまいます。
毒の影響で髪は抜け落ち、手足は徐々に縮んでいく。
意識も朦朧とし、まさに絶体絶命の状況でした。
死の恐怖に直面した善逸は、ここで意識を失います。
そして、眠りの中で、自身の持つ最大の技を放つのです。
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・六連」
普段の善逸からは想像もつかないほどの速さと威力で、見事に鬼の首を斬り落としました。
しかし、勝利したものの、体中に回った毒は消えません。
まさに命が尽きようとしていたその時、駆けつけた胡蝶しのぶによって救出されます。
蝶屋敷に運ばれた善逸は、しのぶの作った薬によって一命を取り留めました。
ですが、猛毒によって受けたダメージは深刻です。
縮んでしまった手足を元に戻すため、後遺症を残さないために、治療を続ける必要があったのです。
あの苦い薬は、善逸の命を救い、体を元通りにするための重要な治療薬だったというわけです。
「三か月間も!?」激ニガ薬を飲み続けた善逸の苦悩
「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」という叫びには、まだ続きがあります。
薬を持ってきたアオイに対して、善逸は泣きながらこう問い詰めるのです。
「三か月間 飲み続けるの この薬!?」
このセリフから、善逸の絶望感がひしひしと伝わってきます。
一度飲むだけでも大変な苦痛を伴う薬。
それを、一日だけでなく、三か月もの長期間にわたって飲み続けなければならない。
考えただけでも気が遠くなる話です。
さらに善逸の嘆きは続きます。
「これ飲んだら 飯食えないよ」
あまりの苦さに、味覚がおかしくなり、食事もままならない。
療養中の数少ない楽しみであるはずの食事すら、楽しめなくなってしまうのです。
もちろん、これは善逸特有の大げさな表現も含まれているでしょう。
しかし、彼の表情や声のトーンからは、本気でつらいと感じていることがうかがえます。
戦いで命を懸けるのとは、また違った種類の地獄。
日々の生活に直結するこの苦痛は、善逸にとって耐えがたいものだったに違いありません。
この一連のやり取りは、彼のヘタレな部分が全開になった、実に善逸らしいシーンと言えるでしょう。
「俺の腕と足 治るわけ!?」疑心暗鬼と回復への期待
善逸の騒ぎは、まだ終わりません。
苦痛への嘆きだけでなく、治療そのものへの不信感も口にします。
「ていうか 薬飲むだけで 俺の腕と足 治るわけ!?」
このセリフは、ただ文句を言っているだけではありません。
那田蜘蛛山で、自分の体が人間のものではなくなっていく恐怖を、善逸は身をもって体験しました。
手足が縮み、動かなくなっていくあの感覚は、今も脳裏に焼き付いているはずです。
あんなにもひどい状態だった体が、本当に薬だけで元に戻るのか。
そう疑ってしまうのも、無理はないでしょう。
「ほんと!?」とアオイに詰め寄る姿には、彼の不安な気持ちがよく表れています。
しかし、この疑いの言葉の裏側には、かすかな期待も隠されています。
治ってほしい。また以前のように、自由に走り回れるようになってほしい。
心の底では、そう強く願っているのです。
だからこそ、薬の効果を信じたい気持ちと、信じきれない気持ちの間で揺れ動いてしまう。
この疑心暗鬼(※注釈:疑いの心から、何でもないことまで信じられなくなること)と回復への期待が入り混じった感情こそ、善逸の人間らしさを際立たせています。
彼は完璧な超人ではなく、私たちと同じように不安や希望を抱えながら、必死に現実と向き合っているのです。
このセリフから見える我妻善逸の人間くさい魅力とは
ここまで見てきた一連のセリフは、我妻善逸というキャラクターの魅力を端的に示しています。
その魅力の根源は、なんと言っても「人間くささ」にあるでしょう。
多くの物語の登場人物は、苦痛や恐怖を内に秘め、気丈に振る舞おうとします。
しかし、善逸は違います。
苦いものは「苦い」と叫び、つらいことは「つらい」と泣き喚く。
自分の感情を隠すことなく、ありのままにさらけ出すのです。
その姿は、一見すると情けなく、格好悪いかもしれません。
ですが、その正直さ、裏表のなさに、私たちはどこか親近感を覚えます。
強がったり、見栄を張ったりしない。
弱音を吐き、時には逃げ出したいとさえ思う。
そんな完璧ではない「普通」の感覚を持っているからこそ、彼の言葉は私たちの心に直接響くのです。
鬼殺隊という過酷な組織の中で、死と隣り合わせの日々を送る少年。
そんな彼が、薬の苦さに本気で嘆く姿は、物語に束の間の癒やしと笑いをもたらしてくれます。
そして同時に、そんな彼が恐怖を乗り越えて戦う姿が、より一層輝いて見えるのです。
「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」という叫びは、善逸の弱さと正直さが生んだ、最高の魅力表現と言えるでしょう。
ヘタレだけど憎めない!善逸のキャラクター性を深掘り
「すげぇ苦いんだけど」のシーンは、善逸のキャラクター性の一面に過ぎません。
彼の魅力を語る上では、他の側面も知っておく必要があります。
まず、彼の代名詞とも言えるのが「ヘタレ」な部分です。
鬼の気配がするだけで泣き叫び、任務を放棄しようと駄々をこねる。
その姿は、鬼を狩る剣士とは思えないほど情けないものです。
また、非常に惚れっぽく、可愛い女の子を見かけるとすぐに結婚を申し込むような一面もあります。
その単純さや軽薄に見える態度は、しばしば周囲を呆れさせます。
しかし、そんな善逸は、決してただの臆病者ではありません。
彼の根底には、驚くほどの「優しさ」と「芯の強さ」が流れています。
例えば、炭治郎が鬼である妹の禰豆子を箱に入れて背負っていることを知っても、彼は炭治郎を糾弾しませんでした。
炭治郎が何か深い事情を抱えていることを察し、その箱を命がけで守り抜いたのです。
彼は、自分が信じた人や、守るべきだと感じたものを、決して裏切りません。
そして、その優しさは、極限の恐怖によって眠りに落ちた時に、本当の強さへと変わります。
意識がある時のヘタレっぷりが嘘のように、冷静かつ圧倒的な力で鬼を滅する。
この極端なギャップこそが、我妻善逸というキャラクターの最大の魅力なのです。
泣き虫で情けないけれど、誰よりも優しくて、いざという時には頼りになる。
だからこそ、彼はどこか憎めず、多くのファンから愛される存在となっているのです。
「静かにしてください~」周りの反応と善逸の対比が面白い
善逸の面白さは、本人の言動だけでなく、周囲のキャラクターとの掛け合いによって、さらに引き立ちます。
あの薬のシーンでも、彼の絶叫に対する周りの反応が、笑いを増幅させていました。
善逸が「つらいんだけど」と騒ぎ立てる中、薬を持ってきた神崎アオイは冷静にこう告げます。
「静かにしてください~」
感情的な善逸と、クールで淡々としたアオイ。
この見事なまでの温度差が、コミカルな状況を生み出しています。
アオイの言葉は、善逸に対するツッコミとして完璧に機能しているのです。
また、蝶屋敷で働く、なほ、すみ、きよという三人の少女たちの存在も欠かせません。
彼女たちは、善逸の奇行に呆れたり、時には一緒になって騒いだりしながらも、献身的に彼の世話を焼きます。
善逸が騒げば騒ぐほど、彼女たちの存在が場の空気を和ませ、どこか微笑ましい雰囲気に変えてくれるのです。
同じく療養中の仲間、炭治郎と伊之助の反応も対照的です。
長男だからか我慢強い炭治郎は、善逸の騒々しさを温かく見守っています。
一方、野生児の伊之助は、善逸の嘆きなどお構いなし。
自分の訓練や回復にしか興味がない様子です。
このように、一人だけ全力で騒いでいる善逸と、それを取り巻くマイペースな人々。
この対比構造が、「鬼滅の刃」の日常シーンにおける面白さの秘訣なのかもしれません。
これも聞きたい!我妻善逸の面白&カッコいい名言集
「すげぇ苦いんだけど」以外にも、我妻善逸にはたくさんの名言があります。
彼の多面的な魅力を知るために、面白名言とカッコいい名言をいくつか見てみましょう。
まずは、彼の情けなさが光る「面白名言」です。
鼓屋敷での戦いで、鬼の強さに恐怖し、まだ鬼と遭遇していない炭治郎に言い放った一言。
「なんでそんなに恥も外聞もなくベラベラ喋れるの!?」
これは、自分の恐怖を棚に上げて相手を非難するという、善逸らしい責任転嫁が見られるセリフです。
また、彼の代名詞ともいえる悲鳴、「ア゛ーーーッ(汚い高音)」も、ある意味では名言と言えるかもしれません。
次に、眠っている時や、仲間を思う気持ちが表れた「カッコいい名言」です。
無限列車で、鬼の術にかかり夢を見ている炭治郎たちを守りながら、一人で戦うことを決意した時の言葉。
「炭治郎が…禰豆子ちゃんを…守ったんだ…俺が守るって決めたもんは…絶対守るんだよォ!!」
普段の彼からは想像もつかない、強い覚悟が感じられます。
また、弟子である獪岳(かいがく)との戦いで、苦しみながらも技を放つ前に自分に言い聞かせた言葉。
「諦めるな。痛くても苦しくても、楽な方へ逃げるな」
これは、かつて師匠から受けた教えであり、善逸自身の成長を象徴する重要なセリフです。
このように、面白さとカッコよさの両方を兼ね備えていることが、善逸の尽きない魅力なのです。
まとめ:「すげぇ苦いんだけど」がファンに愛される理由
今回は、我妻善逸の名言「すげぇ苦いんだけど つらいんだけど」を深掘りしてきました。
このセリフが、なぜこれほどまでにファンの心に残り、愛されているのか。
その理由が、少し見えてきたのではないでしょうか。
この言葉は、単なる面白い一言ではありません。
その背景には、那田蜘蛛山での命を懸けた死闘と、深刻な後遺症を負ったというシリアスな事実があります。
壮絶な体験をしたからこそ、薬の苦さや治療のつらさを、人一倍強く感じてしまったのかもしれません。
善逸の叫びは、彼の弱さ、正直さ、そして「生きたい」という強い気持ちが凝縮された、非常に人間らしい言葉なのです。
私たちは、完璧で欠点のないヒーローに憧れます。
しかし、それと同時に、弱さを抱えながらも必死に前を向こうとする不完全な存在にも、強く心を惹かれます。
我妻善逸は、まさにその後者の代表格です。
怖がりで、泣き虫で、すぐに弱音を吐く。
でも、仲間のためなら、信じるもののために、勇気を振り絞って立ち向かうことができる。